【№37】11年目、さらなる自立支援へ

飛鳥晴山苑がこの地に開設されて今年の春でまる10年目。その年に入所され、以来、変わらず当苑で生活を継続されている方は当年とって85歳、89歳、93歳のおさんかたのみ。「変わらず」と書かせていただきましたが、3人の方にとっての10年は、けっして平坦なものではなかったでしょう。要介護度で申し上げれば、お二人の方は要介護度3で入所され、10年後の今日では要介護度は5。もうお一人の方は4で入所され、今も4。心ならずも病を得、手助けの必要なことも増え、時に過ぎ去りし日の思い出に心をゆだね、離れて暮らしておられるご家族を気遣う日々。どなたにとっても、かけがえのない日々の積み重ね。本当にご苦労様でした。さて、当苑入所者の平均要介護度は近年、改善傾向にあります。数年前まで飛鳥晴山苑に入所されている方の平均要介護度は4.3ほどでしたが、H25年度は4.2、H28年度は4.1、今年の上半期は4.0。H27年度の改正以来、新しく特養に入所してこられる方は3以上となりましたし、加えて、飛鳥晴山苑に新規に入所される方の70%以上が4か5という現状にあってなお、重度から軽度へと「元気になる」という流れが生まれていることは、「奇跡?」。いやいや、当苑でここ数年力を注いでいる「自立支援=おむつゼロの大きな成果」と、意を強くして11年目に出発です。

【№36】「ありがとう」という言葉に包まれて

面接にきてくれた若い求職者に「特養って、どんなところですか?」と聞かれて、「いつも、ありがとうっていう言葉が、行き交っているところですよ」と応えています。長い人生を歩んでこられて、いつしかお年を召されて、自分のことが上手に出来なくなって、途方にくれて、そんな時、自分の孫のような若者がそっと、手を差し伸べてくれる。そして、思わず“ありがとう”って言葉が出て、傍らで孫のような若者がにっこり。お年寄りの心の中には、長い人生の年月の分だけ、たくさんの“ありがとう”が秘められています。そんな、“ありがとう”と出会える場所、特養の一日は、そんな毎日。ぜひ、一緒に働きましょう。

【№35】お見送りの時の静寂

105歳の最後の時まで、病む人々の傍らに立ち続け、生涯を通して導きの光となってこられた日野原重明先生が、7月18日、天に召された。私ども、飛鳥晴山苑にあっては、開設以来、折々にお訪ねいただいてご指導を受け、入所されている方々にそのやさしいまなざしを注いでいただいた。私個人としても、50幾年も前のことになるが、病に倒れた私の義父を看取っていただいたこと、聖路加国際病院を訪ねた際、チャペルでかけられたお言葉の数々を思い出し、その日、それらの一齣、ひとこまが心に低く、響き流れた。

当苑では一年の間に50名ほどの方が旅立たれるが、その方々をお見送りする秋の彼岸供養会が9月の25日に催された。毎日、朝な夕なに、心の奥深くに分け入って喜びや哀しみ、共感や孤独をお受けしてきた職員一人ひとりがしめやかに手を合わせる。ご住職の読経が通奏低音となってあたりを包み込む。お一人ひとりの死に向き合う静寂の時。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

【№34】推薦90名のうち、入所者は約半数

北区の特養ではベッドに空きが出ますと、区の担当課から推薦を受け、希望者との面談等、双方で入所の検討が始まります。飛鳥晴山苑では昨年度1年間で90名の方の推薦を受け入所調整をいたしましたが、最終的に入所された方は47名でした。ひとつのベッドに空きが出て、次の方が入所されるまで通常、4週間。長くベッドが空いたままということにならないよう、スピーディーに入所していただくこと。それが、入所を心待ちにしておられる希望者の要望にお応えする当然の道筋と考えています。一方、入所されなかった43名の方の内訳を見ますと、「辞退された方」が30名、「入院中のために保留」とする方が6名、「すでに亡くなっていた方」が4名、「医療行為等の必要性により受け入れが困難」とさせていただいた方が3名でした。「辞退」につきましては「家族間の意思の不一致」「まだまだ元気」「金銭的な負担」など、そのご事情について、私どもとしてはいかんともしがたいものがございますが、重介護が入所条件である特養であれば、当然ながら「医療行為」の必要性はますます高いはずですから、そのことをもって「困難」という判断は可能な限り遠ざけたいところです。その体制作りを急がなければなりませんね。

【№33】ご高齢者の生き抜く力に感服の毎日

特養に入所してこられる方は、基本的に要介護度が3以上に制限されていますから、必然的に飛鳥晴山苑で暮らしている方も平均要介護度4.2という重い方が中心となります。それでも、お一人おひとりにフォーカスしてお世話をしていますと、2ヶ月前にはできなかったことが今日できる、といった新しい発見にうれしくなることがたくさんあります。辛抱強い歩行訓練の結果、車椅子の方がご自身の足で散歩を楽しまれるようになる、オムツの方が普通の下着を身に着けてしゃきっとお暮らしになっている。そんな場面に遭遇することはまれではありません。私どもの施設の統計では、入所されて何年かの間に残念ながら重くなる方は30%ほどいらっしゃいますが、逆に介護度が軽くなる方は20%ほど、現状維持の方が50%ほどいらっしゃいます。“加齢に抗して70%の方が現状維持以上”ということは、平均年齢88歳という特養にあって、これはすごいことではないでしょうか。介護度が軽くなることが、イコール元気になることではありませんが、平成28年もまた、自立への歩みを止めていないご高齢者の生き抜く力に感服の毎日でした。

 

【№32】感謝、感謝の地域密着、万々歳

私ども、特養・飛鳥晴山苑に入所されている方は、原則北区に住民票がある方ばかりだし、その方々をお世話することでいただける介護報酬も北区の40歳以上の方が毎月負担している介護保険料が基本財源。そのお世話をしている職員も北区在住者が多数派です。健康管理や治療のために定期的に往診してくれるお医者様はすべてが北区で開業している先生たち。入院も特に支障がなければ北区内の協力病院に。特別養護老人ホームは典型的な地域密着型産業なのですね。北区で暮らし、北区で子育てをし、北区で老い、北区で介護のお世話になる。住み慣れた地域で、なじみの人々に囲まれて最後の時を迎える。飛鳥晴山苑がそんなお年寄りたちの穏やかな最後のステージとなりますように。これが私ども職員の大切なお役目と肝に銘じて精進してまいります。それにしても、先日(8月20日)行われた納涼祭。あいにくの嵐をものともせず、お年寄り、障害のある方、ご家族、近くの子供たち、区役所や区議会関係の方々がわんさか集まって、これぞ地域密着。地域に支えられていることを改めて実感させていただいた一日でした。大感謝です。

【№31】再び、虐待の芽について

このコラムで以前にも触れたことがありますが、当苑では職員によるご入居者・ご利用者への虐待について、当然のことながら、繊細に対応してまいりました。幸いにして、これまでのところ、ご家族やご本人の心身に大きなストレスとなるようなケースはありませんでしたが、介護する側には気づかない、小さな兆しはたくさんあると感じています。それを称して「虐待の芽」と意識化し、定期的にチェックをしてもらっています。例えば、「利用者に友達感覚で接したり、子ども扱いしたりしていませんか」という設問に対して───平成26年12月と平成28年3月の調査を比較しますと、「していると」答えた職員が28.1%⇒1.1%に減少。逆に「していない」が51.7%⇒82.2%と増加し、他の職員がしているのを「見たこと、聴いたことがある」は20.2%⇒9.0%となっています。その他、「威圧的態度」「ちょっと待っての乱用」「訴えへの否定的態度」等、15項目にわたっての設問を半年ごとに繰り返した結果、すべての項目でしだいに数値が改善されています。虐待はあってはならないことですし、その「芽」は早期に摘み取らなければなりません。そのためにも定期的なこのチェックは大変有効と感じています。

【№30】ユニットケアはタコツボケア?

特養飛鳥晴山苑は1ユニット10人の要介護高齢者を、概ね4.8人の介護職員がお世話をしている。10人×24時間×7日=1680時間のお世話を、4.8人×1週の労働時間40時間=192時間の持ち時間で行っているという計算になる。別の言い方をすれば、ご高齢者の1時間が介護労働者にとっては8.75時間の重みがあるということもできる。この重い責任がそれぞれのユニットの中に、充満している。ユニット型特養のすばらしさは、一人ひとりのプライバシーに配慮した個別ケアが可能なこと。確かにすばらしい。しかし、「重みが充満した」現実のユニットの日常は、私には「個別よりも孤立」が勝っているように感じるし、「連携よりも不連続」に偏っているように見える。過剰な重みの前に、ユニット同士互いに連携し合うことをやめ、サイロのように、タコツボのように身を固く閉ざしているよう。ユニット型は孤立したタコツボの集積体? その中に沈み込む介護職員の孤立感は深い。私の杞憂であろうか。

 

【№29】自立と依存と

飛鳥晴山苑では自立支援に力をそそいでいる。車いすの方が少しでも歩けるように、おむつを使わず、トイレで排せつできるようになっていただく。そんな自立支援を強化。3年がたち、おむつ使用の方が当初の95%から30数パーセントにまで減少している。入所時、車いすであった方が半年の歩行訓練でトイレまで歩く、廊下をおしゃべりしながら歩いている。そんな光景が目に飛び込んでくるようになった。平均年齢88歳、平均要介護度4.2の方々が、ご自身の尊厳を保持し、努力をしていただいているお姿には頭が下がる思いがする。

辞書には「自立とは依存、受け身から脱して自分の足で立つこと」とあり、当苑の「自立支援」も、可能な限りこのイメージに近づくための試みと考えている。他方、幼児期に脳性まひの後遺障害を負った熊谷晋一郎さんという方がいる。重い障害を抱えながら、のちに医師となった氏によれば、「障害は他者に依存できないことにより発生する。依存先が少ないことが障害である。自立=成長とはどんどん依存先が増えてゆくこと」という。表現は180度違っていても、互いに遠く先に見据えているのは、いかにして人としての尊厳を守るかということになるだろうか。

 

【№28】忍び寄る?虐待の芽

福祉職員によるご利用者への”虐待”が、大きな社会問題となっている。私ども飛鳥晴山苑では幸いそのような事例は顔を出してはいないが、目を凝らせば「虐待の芽」はそこかしこに感じ取れることも事実である。実のところ、他人ごとではない、のである。そのことにしっかりと向き合うために、私どもでは特養介護職全員(90名ほど)を対象にして、一人ひとりに4か月ごとに、15問からなる『虐待の芽チェックリスト』をつけてもらっている。昨年(26年)12月の調査では、例えば「ご利用者に友達感覚で接したり、子ども扱いをしていませんか」という設問に、28%の職員が「している」というマイナスの回答であった。が、翌年(27年)3月の調査ではマイナス回答は12.3%、さらに直近(この9月)の調査では5.7%に大きく減少。「ちょっと待ってを乱用し、長時間待たせていませんか」という設問については26年12月には「している」との回答が25%であったが、27年9月には13.6%に減少。また、「ご利用者の訴えに否定的な態度をとる」「人格を無視した関わりをすることがある」との設問へのマイナスの回答はゼロであった。管理者としてはいい方向に向かっているのかなと幾分安心の結果だが、報道等を見聞きするにつけ、地下深くに眠っているかもしれない”芽”が顔を出さないよう、これからも細心の注意を払ってゆかねばとの思いを新たにしている。